小売業勤務
ABC分析の意味はわかるんですけど、実際に現場でどのように使っていいのか分かりません。活用法を教えてください。
こんな悩みにお答えします。
◆本記事の内容
- 【おさらい】小売業で使うABC分析とは
- 小売業で使うABC分析の活用法【事例】
- 小売業で使うABC分析の活用【効果】
- 小売業で使うABC分析活用【注意事項】
◆読んでほしい人
- ABC分析の使い方がよくわからない
- もっと作業効率を上げたい
- ABC分析で発注と在庫を管理したい
◆本記事の信頼性
この記事を書いている私は、
- 東証一部大手スーパー勤務歴25年
- 管理職歴(副店長・店長)5年
理屈や理論だけでなく、現場で使える解説をしていきます。
◆本記事でわかること
本記事を読み終えると「作業効率」が上がります。
今回は、「これならわかる!小売業で使うABC分析の活用法」を解説します。
ABC分析を、現場でどのように使えるかご紹介したいと思います。
最後まで読んでみてください。
【おさらい】小売業で使うABC分析とは
最初に、ABC分析とは何か?
簡単に、おさらいをしておきます。
背景
小売業はあらゆる世代、家族構成、趣味嗜好、生活様式、風土、風習、慣習に対応するため取り扱うアイテムをどんどん増やし、
いまや数万点規模の品揃えをすることになりました。
その結果、
- 取り扱い商品の増加
- 在庫の増加
- 売場の拡大
売れるもの、売れないものの差が広がり、管理しきれなくなったのです。すべての商品の在庫を持つことはできませんし、場所もありません。
「もっと、効率良く管理したい!」
従業員は選択を迫られます。
- どの商品の在庫を持てばいいか
- なにを優先に発注すればいいか
- なにを先に品出しすればいいか
- どの商品を入れ替えればいいか
数万点に及ぶ商品の優先順位を手作業では不可能です。
そこでPOSデータの活用した、ボタン一つで検索できるシステム「ABC分析」が登場します。
ABC分析とは
カテゴリー内の金額と構成比の累計を使用し、大きい順にABC3つのグループに分類し影響度や重要度、貢献度を分析するための手法です。
たとえば、
- 欠品した場合の影響度
- 売上を伸ばした場合の影響度
- 利益率が上がった時の影響度
- ロスが減った時の影響度
影響度の優先順位をABCで表します。
構成比に使用できるデータは、
- 売上高
- 在庫量
- 利益高
- ロス高
など、金額の高い順に並べ、順に構成比の累計を算出します。
これをグラフにすると以下のようになります。
たとえば、A~Zまで売上順に並べて、
◆A商品群75%、B商品群95%、C商品群残り5%に構成比を設定すると、
- A商品群:A~Fまで6アイテム
- B商品群:G~Mまで6アイテム
- C商品群:N~Zまで14アイテム
つまり、上位6アイテムで全体の75%売上を稼ぎ、次の6アイテムで、全体の95%までカバーしてるということになります。
現在はどの企業でもPOSデータからボタン一つで解析できるシステムが構築されています。
しかし、実際に現場では「ABC分析」は知ってるけど使ってない、どう使っていいかわからないという人も多いと思います。
次のセクションでは、「ABC分析」の活用法について見ていきたいと思います。
小売業で使うABC分析の活用法【事例】
今回は5つの活用法についてご紹介します。
- レイアウト設計
- 在庫優先順位
- 作業優先順位
- 商品入れ替え基準
ひとつずつ解説します。
レイアウト設計
売場作りに活用します。
売場と売上が合っているかを検証するためです。
- 売れてる商品の場所と陳列量は最適か
- 全店と比べてあるべき売場になっているか
- 売れない商品の縮小はできているか
- 季節性に合った売場になっているか
- 今月・今週の売場として合っているか
上記の通りです。
検索するデータも自店のものだけでなく、
- 全店との比較
- 近隣店舗との比較
をすることによって、客観的に自店の状況を検証できます。
たとえば、
他店ではA商品に入っているのに自店ではBだった場合や本来もっと売れるはずの商品の売上が悪い時に、レイアウトとデータを見て改善できます。
- 場所が目立たない
- 販促物がついてない
- フェイスが狭い
- 見た目がよくない
など、必ずなにか問題があるはずです。
ABC分析は、問題発見のツールでもあります。
在庫優先順位
在庫を持つべき商品の決定に利用します。
数万点に及ぶ商品すべての在庫を持つことはできないからです。できないというより必要がないといった方が現実的です。
逆に、現在持っている在庫が本来持つべき在庫なのかも調べることができます。
C商品なのに在庫を抱えていたり、A商品なのに在庫を持っていないなど、同じ在庫金額でも中身を精査することができます。
ムダな在庫削減と欠品防止の両面から改善が期待できます。
作業優先順位
どこから手を付けるか、作業段取りに利用できます。
また、現在の作業段取りが売上に効果的か、検証することもできます。
限られた時間と人員で最大の効果を生み出すための指標になります。
たとえば、品出しをする場合
- 開店前に品出しする商品
- 開店後でもいい商品
- 昼までに加工して出す商品
- 夕方のピークまでに出す商品
- 閉店までに出す商品
- 閉店後に出す商品
担当者は段取りを考えて出さなければいけません。
なにをどのタイミングで品出しをするかは、品切れ、点数アップに影響し、ひいては客数、売上にも関わってくるからです。
商品入れ替え基準
売場の活性化を図るためです。
世の中にはスーパーや百貨店で販売している何百倍もの商品が流通しています。
その中から企業が選びに選んで品揃えしていますが、売れるものもあれば、全く売れない商品もあります。
もちろん、売場が悪い、プロモーションが悪いなどの理由で不振の場合もあるので、ある程度期間は必要です。
しかし、数年にわたり販売しているにも関わらず状況に変化がない商品もでてきます。
数万点の品揃え商品の中から、いわゆる「死に筋」と呼ばれる商品、つまり場所だけとって売上にならないような商品を発見するためです。
売場効率を上げるためには定期的な見直しが必要です。
C商品だからといって、手を抜くわけにははいきません。
C商品の動きを少しでも良くすることが、店舗の売上を左右するのです。
小売業で使うABC分析の活用【効果】
ここで、ABC分析を活用した時の「効果」についてまとめておきます。
人件費削減
効率的に作業を選択することができます。
限られた時間と人員をフルに使って最大の効果を生み出すことができます。
- ムリ・ムダ・ムラの撲滅
- 人員不足の解消
- 残業・長時間労働削減
ABC分析は、作業の優先順位を決める重要な指標です。
利益率の改善
在庫管理がしやすくなります。
売上構成比順を使って分析すれば、持つべき在庫を持たなくていい在庫がわかるからです。
- 発注精度アップ
- ロスの削減
上記2つの効果により、利益率アップが期待できます。
客単価アップ
売上に貢献している商品の欠品をなくせます。
分析によって、どの商品が品切れさせてはいけないかわるからです。
しかし、A商品が品切れしてしまうと、売上が落ちるだけでなく信用まで失い客数減につながります。
A・B商品の品切れがなくなれば、一人あたりの買上点数が増え、客単価アップができます。
売場の活性化
効果的な商品入れ替えができます。
C商品に分類し、その中から改廃するのが効果的だからです。
- 死に筋アイテムの削減
- 新商品の導入
- 売れ筋の拡大
その後の対応策はいろいろあります。
自店に合った対策を打ちましょう。
いつ来ても売場の新鮮さを失わない、新商品の導入による食生活、健康志向など新しい食生活の提案もできます。
消費者を飽きさせない売場作りと品揃え、探す楽しさを提供しましょう。
小売業で使うABC分析活用【注意事項】
ここでは、ABC分析を使う上で、注意することをお話します。
勘違いしないためです。
C商品は必ずある
C商品を撲滅することが目的ではありません。
便宜上、区別しているだけでC商品をなくすことはできないからです。
A商品は全体の約80%を占めています。
逆に言えば、どんなにがんばってもA商品は80%にしかならないのです。
つまり、全体の売上を上げるには残り20%のBC商品がカギを握っているわけです。
あくまで現状であり結果ではない
分析は途中経過であり、結果ではありません。
分析を「点」として見るのではなく、過去からの流れ「線」として見ることが必要です。
たとえば、
- 月・週トレンド
- 前週と比べて(先週比)
- 前年と比べて(前年比)
- 全店と比べて(店間比較)
多角的な分析ができます。
その中で、
- 上位へ昇格しそうな商品の発見
- 下位へ降格しそうな商品の発見
- 全店と比べ異常値はないか
早期発見をして、良いところは伸ばし、悪いところは改善していきます。
この分析をもとに、また売場作りやレイアウト変更をしていくという流れです。
なぜ、こういうデータになったのかを考えることが大切です。
小売業で使うABC分析の活用法【まとめ】
今回は、「小売業で使うABC分析の活用法」と題して、ABC分析は知ってるけど活用法がわからない人に向けて使い方と効果についてお話してきました。
最後に、おさらいします。
◆ABC分析とは
◆構成比に使用できるデータ
- 売上高
- 在庫量
- 利益高
- ロス高など
◆5つの活用法
- レイアウト設計
- 在庫優先順位
- 作業優先順位
- 商品入れ替え基準
◆4つの効果
- 人件費削減
- 利益率改善
- 客単価アップ
- 売場の活性化
ABC分析をもっと活用しましょう。
知っているけど、意外と使っていない分析方法です。
毎日する必要はなく、週に一回、月に一回で十分ですのでデータを取り、現状分析をしてみましょう。
意外な発見と改善のカギを見つけることができるかもしませんよ。
参考になれば幸いです。
今回は以上です。