発注を見習い中の社員
発注の勉強中ですが、翌日の販売数の予測が難しくてなかなかできません。品切れが怖くてたくさん発注してしまいます。どうやって予想すればいいでしょう?
こんな悩みにお答えします。
- 特売発注をする際に準備しておくもの
- 特売発注をする際の発注数の算出方法についての解説と手順
- 特売発注をするようになった人
- 品切れが怖くてたくさん発注してしまう人
- もっと発注精度を上げたい人
◆本記事の信頼性
この記事を書いている私は、東証一部大手スーパー(売上は日本でベスト5入)勤務歴25年、管理職歴(副店長・店長)は5年です。小売業界で長く働いた経験をふまえ、理屈や理論ではなく実践に役立つ解説をします。
発注歴も25年になります。
◆本記事でわかること
今回は、初心者向けの「スーパーの発注マニュアル【実践編】」を解説します。
私自身、大手スーパーで長く働き、発注業務をしてきたので参考になるはずです。
発注を全くやったことがない方にもわかりやすく解説します。
最後まで読んでみてください。
- 発注の予備知識については、
【初心者向け】スーパーの発注マニュアル【事前準備編】 - 発注の基礎については、
【初心者向け】スーパーの発注マニュアル【基礎編】 - 発注上級者との違いはなにか
【発注歴25年】発注が下手な人、上手い人の特徴を解説
で詳しく解説しています。
【特売発注】スーパーの発注マニュアル【準備するもの】
定番発注はだいぶ感じがつかめてきたけど、チラシに掲載されるような特売発注の数量がなかなか決められない。品切れが怖いから、いつもたくさん発注してしまう。
チーフからは在庫を減らせといわれ、減らしたら品切れしてしまった…。
発注をやったことのある人なら、こんな経験あると思います。
今回は、発注精度を上げるための「算出方法」をいくつかご紹介したいと思います。
速く簡単に、発注量を決める「軸」となる数字をはじき出せれば、大きくブレることなく販売も在庫管理もしやすくなります。
その前に、用意するものについてお話します。
- 電卓
- 天気予報・イベント情報
- チラシ情報
- 在庫情報
- データ
- 予想客数・予算・予想売上
順番に説明します。
電卓
電卓は小さい手のひらサイズのものをポケットに入れていつも持ち歩くと便利です。
使う場面はたくさんあります。店の電卓は取り合いになるので、自分用にポケットサイズのものを用意しましょう。
例えば、
売場でも在庫置場でも気になったときに計算できるのでおすすめです。
天気予報・イベント情報
天気予報・地元のイベント情報は基本中の基本です。
店舗周辺の道路工事も来店数に影響します。
例えば、
外部情報は、発注前に確認しておきましょう。
チラシ情報
チラシは掲載される商品名と価格の最終チェックに使います。
掲載される写真の大きさや紙面の構成によって売上が変わってきます。
例えば
特売情報は一覧表だけでなく、チラシで紙面構成も必ずチェックしましょう。
在庫情報
発注時点で保有している在庫量を把握しておきます。
発注において在庫確認は必須です。仕入れる量を決める上で販売できる在庫があればムダな発注をしなくて済むからです。
例えば
店舗によっては、今回で在庫が一掃されるからまた在庫分として100ケース発注しておくこともあると思います。
いずれにしても、その在庫が戦略的なものか、なんとなく増えてしまった在庫かで発注が変わってくるということです。
データ
どのデータを選択して、どう活用するかがポイントです。
例えば
時間は限られていますから必要なデータを選んで使用します。データが多すぎても混乱し、振り回されます。
どういう商品の発注をするときには、どういうデータを検索するのが最適か?
発注の勉強はデータのとり方の勉強でもあります。
予算・予想客数・予想売上
店の日別の売上予算と予想客数、部門の日別予算を用意します。
毎月1ヶ月分は作成されていると思いますので、発注の期間にあわせて使用します。
予想売上は予算作成時と現在で数値に乖離が出てきた場合に使います。
例えば
予算の方が高く、実際は前年98%という場合にも同様に、現実的な数値に置き換えます。
※予想客数の出し方については、
「【初心者向け】スーパー客数予測の方法と手順」で詳しく解説しています。
では、実際発注する際のデータの活用の仕方と算出方法について解説します。
【特売発注】スーパーの発注マニュアル【実践編】
発注数を決める上で、「軸」となる数値を導き出す代表的な計算方法4つを解説します。
- 点数法
- 金額法
- PI値法
- 構成比法
名前はわかりやすいように私が付けました。
順番に解説します。
点数法
◆使用するデータ
◆使用するのに適した条件
- 販売期間か曜日が同じ
- 規格と価格が同じ
- 販売の場所と方法が同じ
上記の通りです。
◆使用に適していない商品
例えば、
花火の発注をする場合
前年の5月~9月までの花火の販売点数が150点だとします。点数だけ見て、150個完売してるから今年はもう少し増やしてみようかな、と考えてはダメだということです。
点数は正規の売価で売れようが、半額で売れようが、同じ1点としてカウントするからです。この場合なら平均単価も見るべきです。下がっているようなら、点数とロス(値下げ・廃棄)のデータを確認すれば、値下げで何点販売したかわかるはずです。
価格も品揃えも展開場所も去年と同じような感じなら、今年も同じような結果になる可能性が高くなります。戦略的にそれでもいいというのであれば、問題ありません。
もし、去年は半分以上半額で売りさばき、今年はもっと効率よく利益も確保したいというのであれば発注を見直すべきです。
◆算出方法
発注を計画している期間とデータの期間を合わせ、検索されたデータの点数を参考に直近のトレンドや天候などの外部情報を考慮して決めていきます。
たまごの販売データ例:前週 7/1(金)~7/3(日)3日間 客数:7520人
商品名 | 平均単価 | 販売点数 | 販売金額 |
たまごS | 138 | 150 | 20700 |
たまごM | 158 | 320 | 50560 |
たまごL | 178 | 250 | 44500 |
合計 | 720 | 116480 |
上記のようにサイズごとに3日間で何個売れたか知りたい場合、たまごは売場も売り方も価格も安定しているので点数別のデータが一目瞭然です。
このデータをもとに、今週の金~日の3日間のたまごの発注を考えます。
金額法
使用するデータ
使用するのに適した条件
- 値下げ・値引き込みで売上金額を知りたい
- サイズ・派生が多い商品の合計金額を知りたい
上記の通りです。
◆使用に適していない商品
商品名 | 平均単価 | 販売点数 | 販売金額 |
花火 | 680 | 150 | 102000 |
- 花火セット 特大 5% = 5000円 ÷ 3980円 ≒ 2個
- 花火セット 大 50% = 50000円 ÷ 2580円 ≒ 20個
- 花火セット 中 35% = 35000円 ÷ 1980円 ≒ 18個
- 花火セット 小 10% = 10000円 ÷ 1580円 ≒ 6個
値下げで売った金額も込で計算しています。
たまごの発注の場合
販売データ例:先週 7/1(金)~7/3(日)3日間 客数:7520人
商品名 | 平均単価 | 販売点数 | 販売金額 |
たまご | 154 | 720 | 116480 |
塩 | 287 | 65 | 18655 |
醤油 | 187 | 90 | 16830 |
たまごをサイズ込みで合計で検索して、S・M・Lのサイズ別の比率を考えて発注します。
- たまご S 17% = 19890円 ÷ 148円 ≒ 135パック
- たまご M 40% = 46800円 ÷ 168円 ≒ 280パック
- たまご L 43% = 50310円 ÷ 188円 ≒ 270パック
値下げで売った金額も込で計算しています。
価格が先週より高くなって、販売比率を変えて発注したい場合にはサイズ込の「たまご」という品種でデータを検索し、意図した比率でサイズ別の金額を出し、売価で割って発注数を算出します。
PI値(Purchase Index)法
1000人あたりの販売を見る指標
本来は、規模が違う店舗間の販売を比較するために使います。
客数が大きく伸びる、または減る可能性がある場合や他店との客数に差がある場合に1000人あたりの販売点数や金額を使い、予想客数へ換算して発注数を算出します。
◆使用するデータ
- (点数÷客数)✕1000=点数PI値
- (金額÷客数)✕1000=金額PI値
◆使用するのに適した条件
- 他店の販売実績を自店に応用する時
- 価格が同じくらい
- 規格が同じ
- 販売の場所と方法が同じ
上記の通りです。
◆使用に適していない商品
例えば、
自分の店では販売したことがない商品があったとします。他店の販売データを調べてみると1週間で300個販売していました。
この時、他店の販売点数ではなく、客数に対してどのくらい販売していたかのPI値を使うと、1週間の客数が17000人の場合
これを、自店の1週間の予想13000人の場合どれくらい発注すればいいかを計算します。
229を軸に実際の発注数を決めるというわけです。
今回は売り切りじまいで200にするか、売れる自信があるなら300、間を取って250と計画次第です。
構成比法
その商品が売上全体の何%を占めているか、全体に対してどのくらいの構成比になるかを予測して金額に落とし込む方法です。
◆使用するデータ
(商品売上金額÷部門売上)✕100=構成比
◆使用するのに適した条件
- 価格の変動がある
- 1つの商品に対して規格がさまざまある
- 販売の場所と方法が幅広い
上記の通りです。
◆使用に適していない商品
例えば、梨には、箱売り、バラ売り、4個パック、2個パック、袋売りなどがあり、それぞれ4L、3L、2L、L、Mがあります。発注は箱売り用、バラ売り用、4個パック用と、別々に発注していません。10kg箱で発注して、形態を変えて販売しているからです。
販売計画例: 7/1(金)~7/3(日)3日間 予想客数:7520人 果物売上予算:150万
商品名 | 平均単価 | 販売点数 | 販売金額 | 構成比 |
梨 | 500 | 820 | 410000 | 27.3 |
ぶどう | 480 | 720 | 345600 | 23.0 |
桃 | 380 | 650 | 247000 | 16.5 |
みかん | 700 | 120 | 84000 | 5.6 |
りんご | 350 | 200 | 70000 | 4.7 |
構成比を軸に、前年に対して今年の構成比をいくつにするかを予測し、今年の売上予算に対して、大枠での金額を出します。
商品名 | 構成比 | 販売金額 | 予定価格 | 予定数 |
梨 | 100% | 410000 | ||
箱売り | 30% | 123000 | ||
4L箱 | 50% | 61500 | 3500 | 18 |
3L箱 | 40% | 49200 | 2980 | 16 |
2L箱 | 10% | 12300 | 2580 | 5 |
パック | 60% | 246000 | ||
バラ | 10% | 41000 |
前年の「梨全体」でいくら販売して、構成比がどのくらいあるかを調べ、今年の箱売り、バラ、パック売りへどういう配分で分けて、さらに4L~2Lのサイズ別の配分にどう落とし込むか計画します。
他の商品との兼ね合いも調整しやすく、ぶどう、桃との構成比のバランスを見ながら計画ができます。予算を変えたり、構成比を変えたり、サイズ配分を変えたりと自在に計画をくみなおすことができるので便利です。
予算という枠の中で、どう商品を配分するかというバランス型の発注になります。
まとめ
今回は【特売発注】スーパーの発注マニュアル【実践編】と題して発注数を決める代表的な算出方法を4つ解説してきました。
おさらいします。
まず、発注するために用意するものです。
- 電卓
- 天気予報・イベント情報
- チラシ情報
- 在庫情報
- データ
- 予想客数・予算・予想売上
マイ電卓はホントにあったほうがいいですよ。チラシも一緒に持ち歩きましょう。私はデータもポケットに入れていつでも見れるようにしてました。
発注数を決める「軸」となる代表的な計算方法4つです。
- 点数法
- 金額法
- PI値法
- 構成比法
それぞれに一長一短あります。発注する商品の特性を考えて選択して下さい。
値引きなどロスが多い商品に点数法は向いていませんし、野菜・果物のように加工形態が多く、価格変動も多い商品には構成比法が適しています。
売上だけでなく、最終的には利益も確保しなければならないので、値下げや廃棄がどれくらい含まれているのかも合わせて考慮する必要があります。ひとつの方法にこだわらず、いくつかの算出方法を組み合わせるのも有効です。
いろいろ試して、最善の発注をして下さい。
参考になれば幸いです。
今回は以上です。