スーパーの新入社員
仕入れた商品に売価をつける時、値入の使い方と計算方法が分かりません。値入と利益の違いもよくわからないので知りたいです。
こんな質問にお答えします。
- 【大前提】値入の仕組み
- 【初心者向け】値入の計算方法
- スーパーの基礎を学んでいる新入社員
- 現場ですぐに使える値入の計算方法が知りたい
- 商品の売価のつけ方に興味がある
◆本記事の信頼性
この記事を書いている私は、東証一部大手スーパー(売上は日本でベスト5入)勤務歴25年、管理職歴(副店長・店長)は5年です。小売業界で長く働いた経験をふまえ、理屈や理論ではなく実践に役立つ解説をします。
◆本記事でわかること
本記事を読み終えると「値入の意味と使い方」がわかります。今回は、初心者向けの「実践で使える値入」を解説します。
私自身、大手スーパーで長く働き、管理職としても勤務していたので参考になるはずです。すぐ実務で使いたい、発注や売価設定を担当している方に、わかりやすく解説します。
最後まで読んでみてください。
【大前提】値入の仕組み
いきなり計算方法や公式を覚えたくなる気持ちはわかりますが、公式ばかり覚えても現場では使えません。
逆に、なぜそういう公式になるのか?
を理解する方が早くて忘れません。しかも、他に応用ができます。
最初に、3つの疑問から解説します。
- 値入の意味
- 利益との違い
- 値入の仕組み
順番にお話します。
値入の意味
販売する前に予定、計画された利益です。
通称「ねいれ」と呼んでいます。
販売する前、というのがポイントです。販売前なので、値引きや廃棄のロスは考慮されていません。机上で計画された利益です。
つまり、値引きや廃棄が全くなく販売できれば、
ということになります。
しかし、実際ロスなく販売することは難しいです。
特に食品スーパーは時間の経過とともに価値が下がる商品を販売しているからです。
では、利益とはどう違うのか見ていきます。
利益との違い
利益は、販売された後、最後に残った利益です。
ここでいう利益とは、「荒利益」のことを指します。通称「あらり」と呼んでいます。
この荒利益を「売上総利益」と呼びます。
販売された後、というのがポイントです。販売後なので、値引きや廃棄が考慮されます。あくまで実際に販売され、ロスを差し引いて残った利益です。
値入の仕組み
ここまでのポイントを図解で解説します。
販売前の予定売価(価格)の中身を見てみると、
- 仕入れ原価
- 値入高
で成り立っています。
つまり、仕入れた原価に「予定する利益」を乗せて売価を設定しています。
一方、値入高が販売後に
- ロス高(値引き・廃棄高)
- 荒利高(売上総利益)
に変わっているのがわかります。
予定された売価で販売されたものの、値引きを余儀なくされ、廃棄になってしまうこともあります。予定していた利益(値入)通りにはいかず、ロスにより減額されたのです。
つまり、荒利高とロス高を合わせると値入高になります。
非常に大事なポイントですので、この図を頭に入れてください。公式を覚えるのではなく、この図をそのまま覚えれば大丈夫です。
【初心者向け】値入の計算方法
では、実際の現場でどのように使われているのか見ていきましょう。
- どんなときに使う?
- どうやって計算するの?
上記の通りです。
順番に解説します。
どんなときに使う?
どういう場面で使うかを見ていきます。
- 売価の設定
- 値下げ率(高)の設定
- 値入率(高)の算出
- 仕入れ原価の算出
上記4つです。
ひとつずつ解説します。
売価の設定
これが一番多いと思います。
仕入れ原価から、必要とする荒利を確保するための売価を設定するからです。これができないと商売になりません。
公式はこれだけ覚えれば大丈夫です。
◆よくある事例
最低いくらとしたのは、現場では算数のテストのような答えを求めていません。あくまで基準となる売価を算出し、最終売価を決定するからです。
公式ではなく、あの図を使えば解けますよ。
値下げ率(高)の設定
先程の事例②の応用です。
必要とする荒利を確保するために、どれくらいまで値下げできるかを計算します。
◆よくある事例
夕方、値引きをする際に使います。
無計画に値引きはできません。きちんと計算して、いくらの値引きでどれくらいの最終荒利を確保できるかを確認するからです。
この計算ができないと売上や最終利益にも大きく影響します。商売上手な人は、この売り切りがうまいです。
値入率(高)の算出
逆算すれば、値入率(高)も当然わかります。
その商品の売価と仕入原価から当初どのくらいの利益を見込んでいたかを算出できます。
◆よくある事例
必要以上に利益をとらない場合もあります。
たとえば、
そんな時は、値入を計算し直して大量に販売します。
いわゆる、「タイムセール」「チーフおすすめ品」というやつですね。計画的に仕入れて薄利多売で利益をコントロールして売上を伸ばす戦略です。
値入の計算は利益を確保するためだけに使うわけではありません。荒利率を限界まで落として売上を伸ばし、荒利高も稼ぐのです。
原価の算出
売価と荒利ありきで商品を仕入れる際に活用できます。
◆よくある事例
バイヤー目線ですね。
チラシに載せる商品を売価と荒利ありきで、仕入れの原価をコントロールする場合に使います。仕入れ原価というより仕入れそのものを担当して原価交渉の際に使えますね。
次に、実際どのように計算するか解説します。
どうやって計算するの?
事例の解答編になります。
もう一度、図を見てみましょう。
◆値入と利益の関係
◆仕入れ原価と値入率から売価を求める公式
この図と公式ひとつがすべてです。これさえ頭に入っていれば全部解けます。
事例をひとつずつ解説します。
※売価はすべて税抜で表示しています。
売価 = 原価 ÷(1-値入率)の公式を使用する。
- 150 ÷ ( 1 - 0.2 )
=150 ÷ 0.8
=187.5 ≒ 参考売価 188円
- ロスと荒利を足すと値入になります。
- ロス + 荒利 = 値入 です。
- 5% + 30% = 35%
- 値入率は35%必要ということです。
- 売価 = 原価 ÷(1-値入率)を使用します。
- 300 ÷(1-0.35)
=300 ÷ 0.65
=461.5
≒ 参考売価 最低462円
ロス率分を考慮に入れた値入率を求めた上で、売価を算出します。
- 値入から荒利を引くとロスになります。
- 値入 - 荒利 = ロス
- 値入率は、売価 = 原価 ÷(1-値入率)を変換すると
- 値入率 = 1-(原価 ÷ 売価)
- 1-(450 ÷ 680)=0.338=33.8%
- 値入から荒利を引けばロスになります。
- 33.8%-25%=8.8%
- ロス 8.8%以内
- 値入率は、売価=原価÷(1-値入率)を変換すると
- 値入率=1-(原価 ÷ 売価)
- 1-(250 ÷ 350)=0.286=28.6%
売価と原価を使った値入率の計算です。
- 350円を20%引きした売価を求めます。
- 350-(350✕0.2)=280円
- 値入率=1-(原価 ÷ 売価)
- 1-(250÷280)=0.107=値入率10.7%
- 280-250=30=値入高30円
図を見てください。
売価から荒利とロスを引けば、原価になりますね。
- 荒利 + ロス = 値入
- 35% + 5% = 40%
- 原価は、売価=原価÷(1-値入率)を変換すると
- 原価=売価✕(1-値入率)
- 780✕(1-0.4)=468
原価 468円以内
ロスが考慮されていない設定です。
- 原価は、売価=原価÷(1-値入率)を変換すると
- 原価=売価✕(1-値入率)
- 98✕(1-0.15)=83.3 原価 83円
まとめ:実践で使える値入と売価の計算方法のまとめ
今回は、「【初心者向け】公式は1つだけ!実践で使える値入と売価の計算方法」と題して初心者の方を対象に、
値入とはなにか?どのような場面で使うのか、そして計算はどうやるのか?
についてお話してきました。
おさらいします。
値入とは、
- 販売する前に予定、計画された利益です。
- 値引きや廃棄のロスは考慮されていない机上で計画された利益です。
利益とは、
- 販売された後、最後に残った利益です。
- ロスを差し引いて残った確定利益
- 通称「あらり」と呼ぶ
◆覚えるべき図解<値入と利益の仕組み>
図解と公式、この2つを頭に入れておけば現場で使えます。
公式で覚えようとするとたくさんあって混乱します。図解で全体像をつかんで、応用するのがおすすめです。あとは現場で実際やってみてください。
参考になれば幸いです。
今回は以上です。