小売業で店長をしています。店は慢性的な人手不足になっているのでなにか対策をしようと考えていますが、有効な対策のメリット・デメリットを知りたいと思ってます。
こんな疑問にお答えします。
◆本記事の内容
◆本記事の信頼性
この記事を書いている私は、大手スーパー勤務歴25年、管理職歴(副店長・店長)は5年です。現場を長く経験しているので生の声を本音で書きます。
今回は、人員不足対策のメリット・デメリットを解説していきます。
この記事を読むと、メリット・デメリットを理解した上で、人材確保にむけてどう行動すべきか考えるきっかけになるはずです。
では、さっそくはじめましょう。
はじめに、人手不足の実態を業界別のデータで見て下さい。
◆人手不足産業といわれる業界
しかも、中小企業ほど人手不足が深刻なことがわかりますね。
小売業は他の業界と人員不足に差はないように見えます。
しかし、大手でも人手が足りていないのが他の業界と異なるところです。
つまり、業界全体として足りてないことになります。
では、現状がわかったところで、順番に見ていきましょう。
小売業界の人員不足対策メリット・デメリット
人手不足対策として企業でされてる3つをとりあげます。
対策その②:店ごとに営業スタイルを変える
対策その③:働き手を変える
順番に解説します。
対策その①:少人数でも運営できる店に変える
求人募集をしてもいつ来るかわかりません。離職率も高いので、最初から少人数でできる店にした方が安定するからです。
人手が足りないなら、少ない人数でまわるような店にするということです。
<よくある改善例>
- 売場を小さくする → 売れない商品をなくしていく
- 作業工程を見直す → ムダな作業をやめる
- 店舗自体を小さく作る → 設備費が少なくてすむ
- 無人システムの導入 → 無人レジの導入
どこの小売店でも、現在進めている改善です。
ちなみに、私は上記4つの改善すべてにかかわったことがあります。
その上で、メリット・デメリットについて解説します。
メリット
◆「1人の従業員が担当する面積を減らす」
単純に売場が小さくなれば、商品を出す量も減るし、移動する距離も短くなるので作業量時間が短くなるからです。
体育館の掃除を1人でやるのと、教室の掃除を1人でやる違いと同じです。
お店が大きいと人手もたくさん必要になります。
◆ 「ムダな作業、動作を止める」
いくら店を小さくしても、ムダな作業があれば人手がかかるからです。
徹底的にムダな作業を洗い出し、工程を見直し時間の短縮することで人員削減をしていきます。
例えば、スーパーの品出しの場合
100個の商品にバーコードを張りながら出すのと、貼らずに出すのとでは2分違います。100アイテム出すと200分、1ヶ月で100時間、1年で1200時間。
1日8時間働くとして、150人分余計に人員が必要となります。もし、2分をなくすことができれば、150人分の削減になります。
つまり、2分多いか、少ないかで300人分の差ができます。
◆ 「お客様にも協力してもらう」
業務の一部をお客様に協力してもらうことで、人員削減になるからです。
例えば、最近コンビニでも導入を始めた無人レジです。商品スキャンも会計も袋詰もセルフにすることで人手を確保できます。
小売業の人員確保の最大の理由はレジです。大手のスーパーになれば、レジだけで30~40人は必要になります。
レジの人員削減は小売業の課題のひとつです。
今後レジの無人化はもっとも期待されるシステムになるでしょう。
デメリット
◆ 「1人当たりの作業の幅が広がる」
ムダな作業を減らし、売場が小さくなったおかげで、生まれた時間を他の作業と兼務するようになるからです。
例えば、品出しを専門にしていたアルバイトが、空いた時間でレジに入ることができます。あるいは、レジを専門にしていたアルバイトが品出しにまわることもできます。
そうなると、いろんな作業をテキパキこなす人材が必要になります。ところが、今までのやり方を変えさせるのは非常に困難がともないます。
やりたがらないのが課題です。
これをどうやって全員に周知徹底させるかが、管理職の腕の見せ所になります。
◆ 「売場の空きスペース活用」
空きスペースからは、なにも生み出さないからです。
売場はムダな空き地があってはいけません。
例えば、ゲームセンターにする、テナントをいれる、販売業者に週替りで貸す、イートインに変えるなど売上と集客の両面で活用を計画していきます。
しかし、なかなか集客、売上にむすびつかないのが現状です。
売場が小さくなり、空きスペースができた店舗は誰から見ても違和感を感じ、店のイメージダウンにつながります。
そしてさらに、客足は遠のき売上が下がるという悪循環になっています。
◆ 「無人化システムは多額の投資になる」
多額の投資を回収できるかが課題だからです。
確かに、システムを導入すれば人員を削減できます。しかし、薄利多売の小売業では大手ならできることも中小企業では導入できません。
大手と中小企業の格差はさらに広がります。
導入は見切り発車でなく、シミュレーションと検証が必要です。
対策その②:店ごとに営業スタイルを変える
すべての店が同じ営業スタイルをとる必要がないということです。
その店にあった営業スタイルにした方が、求人も業績も変わる可能性があるからです。
例えば
- 店休日の設置
- 営業時間の短縮
この2つが代表例です。
メリットから見ていきましょう。
メリット
◆ 「求人確保につながる」
小売業への求人が少ない理由に、休みが少ない、営業時間が長いというのがあるからです。
昔と違って、スーパーもコンビニもたくさんあります。重ならないようにすれば、交代で店休日をとっても良いはずです。
店休日があると、
- 年間休日が増える
- 有給休暇の取得率が上がる
以上の効果が期待できます。
求人募集するにはいい材料になります。
最近は、ファミレスの24時間営業も見直されていますね。
コンビニ、スーパーもそろそろ見直す時期にきています。
◆ 「利益の確保につながる」
営業を続けるには、経費もかかるからです。
誰も来ない深夜に営業することは、人件費も光熱費もかかります。見合った売上がなければ利益を圧迫します。
営業の短縮で
- 光熱費・人件費削減
- 利益が出やすくなる
以上2つの効果が期待できます。
特に、売れないにもかかわらず、深夜まで営業して赤字になっている店は検討すべきです。
一斉にではなく、やる店とやらない店を選別すべきです。
デメリット
◆「社員・オーナーは休めない」
営業時間が短縮され、店休日を作っても、必ずしも仕事が休みとは限らないということです。
店休日であっても、社員がする作業はあります。
例えば、食品スーパーの店休日に
- 商品の荷受け
- 売れ残った商品処理
- 売場の掃除
- 本部からのメール確認
- 発注
- 翌日の準備
少なくてもこれくらいはあります。
なぜなら他の店は営業しているので、個店ごとに本部は対応しないからです。
休みの日でも、他店と同様の業務をしなければ、翌日の営業に支障が出てしまいます。
店休日といっても、仕事は休みにはならないのが現状です。
だから、店休日を作りたがらないのです。
◆「食品ロスが増える」
食品スーパーの場合、生鮮品は店休日前にすべて売り切ります。
店休明けには、一昨日の商品の残りがあってはいけないからです。
しかし、すべてを売り切ることは困難です。通常なら翌日も販売できる商品さえ売り切ります。
例えば通常、野菜、生魚、生肉、パンなどは翌日に値引きで販売します。しかし店休日前日は、1日早く値引きで売り切ります。
この時、膨大な値引き作業と、大量の廃棄がでる可能性があります。
売場の鮮度向上のために良い一方で、食品ロスが増える可能性もあるのです。
対策その③:働き手を変える
性別、年齢、国籍問わず人員確保をするということです。
- 外国人の採用
- シニアの採用
順番にメリット・デメリットを見ていきましょう。
外国人の採用
はじめに、外国人労働者の現状です。
外国人労働者の割合は年々増加していることがわかります。しかし、諸外国と比べるとまだまだ少ないのが現状です。
<メリット>
- 若くてやる気がある。
- 優秀な人材を確保できる。
<デメリット>
- 生活習慣と言葉の問題
- 就労ビザと不法就労
- 外国人犯罪と地域住民の不安
- 企業側の受け入れ体制ができていない
以前私も、20歳前後の中国人5人と仕事をしたことがあり、みんな優秀で日本語も堪能でした。日本の大学に進学した人もいて、夢に向かって働いていた印象があります。
企業としては、優秀な人材の確保のため外国人労働者を受け入れたいはずです。しかし、上記のような問題で採用に踏み切れていないのが現状です。
最近では、世界的なコロナ感染の影響で、今後の労働者確保が心配されます。
シニアの採用
次に、シニア労働者の推移を見てみましょう。
出典:内閣府「平成29年度版高齢社会白書(全体版)高齢者の就業」
労働人口に占める高齢者の比率は上昇しています。
労働力人口総数に占める65歳以上の割合は、2016年で11.8%で20年前の1995年の6.7%の2倍近くに伸びています。
<メリット>
- 技術や経験が豊富で即戦力も期待できる
- 若手の指導育成につながる
- 早朝の勤務ができる
<デメリット>
- 長時間はできない
- 健康面での不安
- スピードや力仕事は期待できない
- 配置場所を考慮しなければならない
働けるうちは働きたいという人が増えているので、時間と配置を考慮すれば、十分戦力になるはずです。
人生経験も豊富なので、細かいことに左右されず働いてくれます。
例えば、若い人が苦手な朝は早い時間の仕事でも、嫌がらず積極的に働いてくれます。仕事も丁寧なので、私が店長時代はよくお世話になりました。
適材的所が大事です。
まとめ
今回は「人材不足対策のメリット・デメリット」を解説しました。
どんな対策にも一長一短があります。
よく理解した上で、自分の店にはどの方法が合っているか、求人側と経営者側の両面から考える必要があります。
しかし、そもそも自分の店に問題があって求人が来ない場合も多く、自覚してないケースもあります。
まずは自分の足元から見直してみてはいかかでしょう。
求人募集については、いくら求人してもアルバイト募集に来ない店の特徴4選で詳しく解説しています。
今回は以上になります。