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小売業の食品ロスがなかなか減らない原因と対策!

スーパーの仕事

食品ロスに関心がある人

小売業界の食品ロスが問題になってるわね。捨てるなんてもったいない。どうしてあんな大量に廃棄が出るの?

こんな疑問に、お答えします。

 

◆本記事の内容

【食品ロスに関心がある人向け】

  • 食品ロスの現状
  • 小売業で食品ロスがなかなか減らない原因は?
  • 食品ロスをさらに減らすための対策
 

◆本記事の信頼性

この記事を書いている私は、大手スーパー勤務歴25年、管理職歴(副店長・店長)は5年です。商品の管理を長く経験しているので生の声を本音で書きます。

 

今回は、【食品ロスに関心がある人向け】小売業が食品ロスを大量に出してしまう原因を解説していきます。

スーパーに25年勤務した経験から感じたことを書いていきますので、参考になるはずです。

そして、本記事を読み終えると、小売業界の食品ロスの仕組みと対策がわかると思います。

 

食品ロスもったいない、と思っている人は、最後まで読んでチェックしてみてください。

 

※担当者がやるべき部門のロス対策については、【食品小売業向け】発注を減らすことがロス対策じゃない!で詳しく解説しています。

 

 

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【前提理解】食品ロスの現状

 

まず、前提理解として食品ロスの現状を見てみましょう。

 

出典:消費者庁 食品ロス削減関係参考資料

 

ここでおさえて欲しいポイントは3つあります。

  • 世界の食料廃棄 年間約13億トン
  • 日本の食品ロス 年間約643万トン
  • 日本人1人当たりの食品ロス 約51kg

 

世界で13億トンといわれてもピンときませんね・・・。

でも、日本人1人あたり51kgなので、米の大きい袋10kgを5袋分と考えると相当な量を毎年廃棄してるのがわかったと思います。

 

念のために確認しておきます。

「食品ロス」とは、本来食べられるのに、捨てられる食品です。

 

 

次に、食品ロス量の推移をみてみましょう。

 

出典:消費者庁 食品ロス削減関係参考資料

 

ここでのポイントは、下記の3つです。

  • 食品ロス総量は2012年から緩やかに減少傾向
  • 食品小売と外食産業は増加傾向
  • 減少の貢献度は家庭と食品製造業が高い

 

家庭が食品ロスを一生懸命減らしても、事業系は変わっていません。

上がったり下がったりしながら結局、2012年からそんな減った感じはしません。特に小売と外食産業はむしろ増えてます。

 

なぜ小売業の食品ロスは減らないのか?

 

この疑問を解決するため「食品小売の食品ロス」を解説していきます。

 

 

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小売業で食品ロスが減らない原因は?

 

スーパー業界に25年勤務した、現場からの考察になります。

下記に上げる4つの原因は、食品ロスを減らす上で障害となり、現場レベルでは変えようがないことです。

 

<食品ロスが減らない原因>

  • 売場が大きすぎる
  • 販売期限で管理している
  • 品切れはできない
  • 消費者の厳しい目

上記4つです。

 

ひとつずつ解説します。

 

原因①:売場が大きすぎる

 

どこの店舗も「売上に対して売場が大きすぎる」ということです。

 

<売場を大きくしてる理由>

  • あらゆるお客様のニーズに応えようと、品ぞろえを増やすため。
  • 少ない人数でたくさんのお客様に対応するため。

 

多すぎる品ぞろえ

 

結局は、集客のため、売上のためです。

しかし、その反面で食品ロスも出やすい環境を作っています。

 

品ぞろえが豊富な店は支持を得ます。たくさんの種類、たくさんの量から選びたい欲求が消費者にはあるからです。

 

支持を得ようとすればするほど、品ぞろえは増えていきます。

ここに、コンビニとの違いがあります。

 

売れる商品しか置かないのはコンビニ、売れなくても置くのがスーパーです。

 

少人数で品出し

 

中型スーパーで1日2000~3000人のお客様が来店されます。

 

でも従業員は60~70人、先回りして大量に並べておかないと品出しが間に合いません。

仕事は品出しだけではありません、大量に出しておくことで時間を確保できるからです。

 

たくさんのお客様にきて欲しいから大きな店を作る。

しかし、従業員は少なくて済むようなシステムにする。でも品出し以外の時間も確保しなければならない、ということです。

 

品ぞろえは豊富、商品は大量、でも少人数で対応する。

 

ここに、食品ロスを生み出す「ムダ、ムラ、ムリ」があるのです。そして、新しい店は毎年どんどん増えています。

 

haru
haru

スーパーのライフラインとしての宿命とはいえ、もう少しコンパクトにしていいと思います。

 

原因②:販売期限で管理されている

 

小売業で食品ロスの1番の原因は、納入期限切れと販売期限切れです。

店頭で、賞味期限が近づくまで販売することがないからです。

 

順を追って説明します。

 

商品には「消費期限、賞味期限」があるというのは、ご存知だと思います。

  • 消費期限・・・安全に食べられる期限 お弁当、パンなど
  • 賞味期限・・・品質が変わらず美味しく食べられる期限 飲料、缶詰など

 

この他に、小売業では「納入期限・販売期限」というのがあります。

  • 納入期限・・・できるだけ販売期限を多く確保し、売れ残りを少なくするため
  • 販売期限・・・購入後、賞味期限内に適切に消費される期間を確保するため

 

この「納入期限・販売期限」が小売業の食品ロスに大きく影響しています。

 

下記の図は、メーカーから消費者へ商品の流れを示したものです。

出典元:流通ニュース「2分の1ルール/イオン、ヨーカ堂、ユニー、ヤオコーなど大手の採用拡大」

 

◆納入期限

 

<賞味期限が6ヶ月の場合>

メーカーが製造した日から2ヶ月以内に小売へ納品しない場合は、受け取らないルールです。

期限を超えてしまった商品は、行き場がなくなり廃棄になってしまいます。

 

現行、メーカーから消費者へ商品が渡るまで、均等に3分の1の期限で流すというルールがあります。「3分の1ルール」といわれています。

 

たとえ、3ヶ月以上賞味期限が残っていたとしても廃棄になるのです。

 

先程のグラフ、「食品ロス量の推移」で食品製造業(緑色の部分)の原因の1つです。

最近では、この3分の1ルールを見直し、「2分の1ルール」に一部変更されています。

 

上の表のように納入期限を賞味期限の半分までとしたのです。しかし、これは小売業としてはうれしくはありません。むしろやりたくないはずです。

 

なぜなら、販売期限が短くなるからです。

賞味期限自体が長くなるわけではなく、納入期限だけが伸びたので、真ん中の小売業が一番被害を受けるわけです。

 

現在は、飲料や菓子類だけの適用ですが、今後拡大すればロスが増え経営を圧迫するでしょう。

 

 

次に、企業独自で設定している販売期限を見ていきます。

 

◆販売期限

 

<賞味期限が6ヶ月の場合>

購入後、賞味期限内に適切に消費される期間を確保するためです。

小売業はメーカーから納品された商品を、「3分の1ルール」にそって、販売期限までに消費者に売らなければなりません。

 

例えば、「醤油」

一般的によく使われている1リットルタイプを賞味期限内だからと5日前まで販売したら、購入後、残り5日で全部使い切ることができないからです。

「水」も同様です。備蓄のために購入したのに、1ヶ月しか賞味期限が残っていなかったら備蓄になりません。

 

なので、「缶詰」は製造から2~3年の賞味期限が一般的です。しかし、「3分の1ルール」によって長くても1年を残して売場から撤去される、ということになります。

 

ここが、小売業最大の食品ロスの原因になります。

 

◆商品を4つに分類する

 

さらに食品ロスを理解するのに、商品を「売れ方と期限」で4つに分けます。

  • 売れる商品で期限が長い
  • 売れる商品で期限が短い
  • 売れない商品で期限が長い
  • 売れない商品で期限が短い  

 

順番に見ていきます。

 

<売れる商品で期限が長い>

  • 小売業では、一番欲しい商品。利益率が高ければさらに好んで販売する。
  • こういう商品をいくつ作れるか、比率を高くするかで経営を左右する。
  • ほぼロスはでない。

 

<売れる商品で期限が短い>

  • 生鮮食品(野菜、果物、魚、肉、惣菜)の上位半分が、ここに入る。
  • 期限は短いが、比較的ロスになりにくい商品。

 

<売れない商品で期限が長い> 

  • 加工食品で品ぞろえを増やそうとするとここが増える。
  • すぐにロスにはならないが、いずれ大量の値引きや廃棄につながる。
  • 大型店になればなるほど、大量のロスにつながる。

 

<売れない商品で期限が短い> 

  • 生鮮食品でも下位3分の1はここに入る。
  • 生鮮食品で品ぞろえを増やそうとするとここが増える。
  • 小売業で一番嫌う商品、置きたくない商品。
  • 1アイテムごとのロス量は少ないが、塵も積もれば山となる。

 

当然ですが、売れる商品はロスになりにくいです。しかし、売れない商品は期限の長さに関係なくロスの原因となってしまいます。

 

品ぞろえの確保、購入後の期間の確保、2つの確保が食品ロスを生み出す構造になっています。

 

haru
haru

生鮮食品は、期限より鮮度劣化を重視しているので、期限や売れ方に関係なくロスになりやすいですね。

 

原因③:品切れはできない

 

商品は品切れなく100%そろっている。というのが小売業の義務であり使命です。消費者も当然それを期待して来店されます。

 

会社からもきつく、いわれてるはずです。

「品切れは悪、ファンを減らす原因、売上も下がる」店の存続にかかわります。

 

しかも、営業時間は9時~22時または24時までですから、いつ来店されても、という前提があります。担当者は、品切れを恐れて発注を増やしたり、製造を増やしたりします。

この行動が、売上を上げることにもなり、食品ロスを増やすことにもなります。

 

食品ロスだけ考えれば、品切れしたほうがロスは減ります。品切れしないようにするから増えるのです。もちろん売上は減りますが・・・。

 

haru
haru

ロスを抑えながら、売上を上げていく、ここが担当者の腕の見せ所ともいえます。

原因④:消費者の厳しい目

 

消費者の厳しい目で選別され、残った商品は値引きされるか、廃棄になります。

 

消費者が購入する時の心理です。5つ上げてみました。

  • 1円でも安いもの
  • 1日でも期限が長いもの
  • チョットでも泥がついてないもの
  • チョットでも傷がついてないもの
  • チョットでも形が良くないもの

こんな感じでしょうか。

 

仕入れも、消費者目線で選別しますから、期限が短いもの、傷や形の悪いものは仕入れなくなります。味は一緒なのに、見た目が良いものだけ店頭に並ぶことなります。

ここにも、食品ロスの原因があります。

 

haru
haru

日本の消費者は非常に厳しい目を持っていますので、ここは理解と協力が必要ですね。

次に、以上をふまえてどう対応するか見ていきます。

 

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食品ロスをさらに減らすための対策

 

4つの原因を見てきました。

ではどうすれば食品ロスを減らすことができるのか3つあげます。

 

  • 政府と現場のロス単位を合わせる
  • 賞味期限・販売期限の再設定
  • 見た目を気にしすぎない

上記の通りです。

 

順番に見ていきます。

 

対策①:政府と現場のロス単位を合わせる

 

食品ロスの単位が、農林水産省は重さ、企業は金額で算出しています。

 

食品ロスがどれくらいあるかを世界規模で算出するには、重さが一番速くて簡単でしょう。

しかし、企業はロスを重さで考えていません。金額でしか現場も知りません。

経営には重さは関係なく、価値が重要だからです。

 

例えば、

1個10円のもやし50個捨てるのと、1個5000円の松茸2個捨てるのはどちらがもったいないかという話です。

正解は、どちらももったいないです。

政府の示す重さでなら、もやしです。でも現場の感覚では500円と1万円という価値で判断してしまいます。

現場でロスの重さをいちいち計るのは現実的ではありません。

 

私の考えは、取り扱っているすべての商品の重さをあらかじめコンピューターに登録しておきます。廃棄の登録はスキャンで行っているので、金額と数量はもちろん重さまでも表示されるようなシステムにしてみたらどうかと思います。

 

現場では重さの意識はないので、こういったシステムの「見える化」で意識改革が必要です。

 

但し、重さを登録する手間と、システムを変えるお金が問題です。

 

対策②:賞味期限・販売期限の再設定

 

現在の賞味期限が本当にあるべき期限かどうかを再調査と再設定が必要です。

各メーカー技術は日々進歩しています。もっと長く設定しても、問題ないものは多いはずです。

 

2分の1ルールで販売期限だけが短くなってしまうと、小売業としてはどうすることもできません。賞味期限を見直さない限り、2分の1ルールはこれ以上進まないでしょう。

販売期限が短くなることは、食品ロスだけでなく膨大な値引き作業がさらに増え、長時間労働の原因にもなります。

 

作業効率の面からも、改善が必要です。

 

対策③:見た目を気にしすぎない

 

見た目が少しくらいよくなくても積極的に買いましょう。

 

最近では、見た目が良くないものを商品化をして販売する企業が増えています。

 

<メーカーの対策>

  • 無選別せんべい
  • ふぞろいりんご、わけありトマト
  • サイズいろいろ卵

 

少し割れていたって、形が悪くても、味は一緒です。値段も安いので非常にお買い得です。

但し、まだまだ数は少なく、浸透されていません。

 

一番の問題は、小売の方で無選別やわけあり品を置くスペースが足りないことです。

販売側の努力も必要ですね。

 

haru
haru

わけあり品は、最近注目されていますので集客にもなりますし、食品ロスへの貢献にもなります。

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まとめ

 

今回は、小売業の食品ロスについてお話してきました。

販売側の立場でどこに問題があるか、という視点で書きました。

 

細かく言えば、他にも原因はあります。しかし、解決していくには、販売側の努力と消費者の理解と協力がなければ、上手くいきません。

 

  • 世界で深刻な飢えで苦しんでいる人は約8億人
  • 5歳未満の発育阻害は1.5億人
  • 世界の人口、2050年で約98億人へ

 

そもそも何のために、食品ロスを減らそうと言っているのか、もう一度ひとりひとり考え、行動に移して欲しいと思います。

 

今回は以上です。

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