店長
売上げアップも厳しく前年割れの状況ですが、経費を下げて、営業利益だけでも予算を達成したいと思っています。店舗でできる経費削減の良い方法はないでしょうか?
こんな悩みにお答えします。
- 経費削減の理想と現実
- お店でできる!経費削減のアイデア18選
◆読んでほしい人
- 売上は厳しけど利益は出したい
- 経費削減のアイデアが欲しい
- 会社から経費削減を命令された
◆本記事の信頼性
この記事を書いている私は、東証一部大手スーパー(売上は日本でベスト5入)勤務歴25年、管理職歴(副店長・店長)は5年です。小売業界で長く働いた経験をふまえ、理屈や理論ではなく実践に役立つ解説をします。
◆本記事でわかること
本記事を読み終えると「経費削減の方法」がわかります。今回は「店でできる経費削減の具体的な方法18選」を解説します。
最後まで読んでみてください。
経費削減の理想と現実
小売業の売上総利益率の平均は約28%といわれています。
しかし、営業利益率になると、平均で約3%になります。単純に計算しても25%は経費で消えていることになります。
みなさんもご承知の通り、
によって算出されます。
なぜこんなに経費が引かれてしまうのか?
販売費および一般管理費(販管費)とは何なのか、そのあたりからお話したいと思います。
販売費および一般管理費(販管費)とはなにか?
- 販売費:販売活動により発生する費用
- 一般管理費:会社の運営と管理活動により発生する費用
ざっくりいうとこんな感じです。
さらに人件費、設備費、販売費、その他管理費に分類されます。
下の図は、4つの経費の分布をグラフにしたものです。
この分布は、私が以前働いていたある店舗の経費です。
次いで、設備費で約40%ですが、設備費の約65%が地代(家賃)で支払われます。
この2つ人件費、設備費でなんと9割近くを占めています。
にもかかわらず、小売業はどこも人手不足・・・
たくさん人手のかかる商売なのです。
経費削減とはいうけれど・・・
店舗レベルでできる経費削減には限りがあるということです。
売上は予算どころか、前年を上回ることさえ難しくなっています。
でもどこから手を付ければいいのか?
これは、構成比の高い人件費・設備費の経費を減らすのが一番効果があります。しかし、減らすといっても制約があります。
たとえば、
- 理由もなく、アルバイトを辞めさせられない
- むしろ時給は最低時給を遵守するので毎年上がる
- 地主が地代交渉に応じることは難しい
とても店舗レベルで解決できません。
最低時給は各都道府県が決めた法令に基づくもので遵守しなければなりませんし、アルバイトといえども正当な理由なく解雇はできないからです。
地主への地代交渉も、賃上げには応じても、減額に応じないでしょう。
他にも、
- リース契約の見直し
- 電気契約の見直し
- 仕入先の見直し
- 照明のLED化
これら契約、料金、仕入先等の見直しは、店舗ではできません。
店長にそんな権限はないですし、個別対応はしていません。すべて本部一括なのです。
場合によっては、体外的な契約はすでに見直しが済んでいて、これ以上の見直しはできない企業もあるでしょう。
そこで、以下のような対応をしてきます。
- 派遣社員を切る
- 社員の配置換え
- 営業時間の短縮
アルバイトより人件費の高い派遣社員や正社員の配置換えで、店経費を減らしています。営業時間の短縮は、時給の高い夜間や早朝バイトを使わなくて済むうえ、光熱費の大幅削減の効果もあるからです。
時短しても冷蔵は止まりませんが、照明、パソコン、調理用の電気を使わないだけでも経費削減に大きな効果があります。
では、店舗レベルでできる経費削減はないんでしょうか?
次に、紹介します。
お店でできる!経費削減のアイデア18選
店舗でできる経費削減に、なにかやればド~ン!と大きく減らせるものはありません。
小さなことからコツコツと、「ちりも積もれば山となる」精神で取り組むしかありません。しかも結果が出るまで最低1ヶ月から3ヶ月はかかるので根気よく継続することが大切です。
今回は、実際私が取り組んだ事例と他の店で効果のあった事例をご紹介したいと思います。
開店前作業と閉店後作業を減らす
照明の電気代と人件費削減になります。
通常開店9時で閉店が24時の店舗は、開店3時間前の6時から作業を開始して、閉店後も2時間くらい作業している場合が多くあります。
たとえば、
もし、従業員2人で作業していたなら、さらに効果あります。
もちろん、そもそも残業代をきちんと払っている企業の場合ですが・・・
開店前と閉店後は照明を間引く
営業していない時間帯の経費は、極力抑えるということです。
とはいえ、真っ暗い中での作業は危険です。
明るすぎず暗すぎず、必要十分な明かりで作業しましょう。
トイレ・休憩室使ってないときは消す
トイレに限らずですが、使用してない部屋の電気は消しましょう。
ちょっとしたことですが、ムダな電気は年間にすると大きくなります。
バックヤードを必要以上に明るくしない
手元が暗い中で作業するのは危険ですが、広いバックヤードを隅から隅まで全部明るくする必要はないからです。
ここまで照明の節電について4つ挙げましたが、暗い中での作業は、危険で作業効率も悪くなります。
一方で、ムダな明かりは電気代の浪費にしかならず利益を圧迫します。
エアコンの設定温度を変える
設定温度を1度上げると13%、1度下げると10%の節電になるといわれています。
クールビズとはいえ、暑さを感じることはありますが、だからといって、23度や25度の設定は下げ過ぎです。
- 夏場は28度を基準に状況に応じて調整する
- 冬場は20度を基準に状況に応じて調整する
- サーキュレーターを活用する
- 人がいない場所のエアコンは切る
これだけでもかなりの節電効果があります。
繰り返しになりますが、「ちりも積もれば山となる」の精神でやらないと上手くいきません。
蛇口の水漏れパッキン交換
水道代が急に高くなった経験はないでしょうか?
と聞かれて、わからない、見てないので知らないではいけません。
店舗責任者は水道代の推移を見ていないと、急に上がったことに気づかずに水漏れを放置することになるからです。
- 前回から急に水道代が高くなった
- 締めてあるのに蛇口から水が滴り落ちている
- トイレの手洗い蛇口が出しっぱなし
以上の症状が見られた場合はすぐに対処しましょう。スルーしてると、とんでもない高額な水道代を毎月請求されることになります。
両手を使う
作業するときの基本中の基本です。
しかし、自分では両手を使っているつもりでも効率の悪い使い方をしている人がたくさんいます。
たとえば、商品を棚に陳列する場合
両手を使うというのは、右手左手同時に商品をつかんで、そのまま棚へ陳列するやり方です。両手→棚→両手→棚のワン・ツー、ワン・ツーのリズムですので、1手減ります。
しかも1個ずつを、両手で2個、4個を同時に品出しすれば半分以下の時間で済みます。
これを全員が徹底してやれば、
- 大幅な作業時間短縮
- 残った時間で次の作業もできる
- やり残した作業を社員がしていた残業も減る
- 営業時間外の作業も減る
- 人件費・光熱費の削減にもつながる
経費削減・作業改善の根本をなす事例です。
道具を使う
速く安全に効率的な作業をすることができるからです。
逆に、一度に大量の商品を積んで、倒してしまったり商品を傷つけてしまい効率をわるくする場合もあります。
お客様への安全に対しても配慮が必要です。
道具の手入れ・修理・交換も重要です。
たとえば、
- 切れないカッター
- 動きの悪い品出し用台車・キャリア
- ボロボロの手袋
- 穴の空いた靴・すり減った靴
手袋・靴も作業効率に重要なアイテムです。
手と脚は作業の要で、体を保護する上でも定期的な交換はした方がいいです。カッターも切れない刃は力が入って危険ですし、作業も遅くなります。
一度見直すことをおすすめします。
スキルアップをはかる
作業動作を速くするためです。
社員からアルバイトへの教育で全体的なスキルのベースアップをはかります。
たとえば、
- 加工時間の短縮と出来栄え
- 品出しの短縮
- レジスピードアップ
スピードアップだけが目的ではなく、出来栄えがよくなることでの売上アップにもつながります。レジスピードが上がれば、レジ待ちのストレス軽減になり常連客を増やせます。
経費削減しながら売上にも貢献できる一挙両得です。
適正発注をする
過剰な発注をやめることで得られる効果が大きいということです。
- 商品到着が早くなる
- 入荷品荷下ろし時間短縮
- 在庫整理時間短縮
- 商品を探す手間が少なくなる
- 販売期限切れ商品が減る
- 廃棄・値引き作業時間の軽減
発注量が過剰になると、1回のトラック便では運べず増便となって入荷時間が遅れます。商品が到着しなければ作業は進まず遅れます。
到着後も大量の台車整理に追われ、出したい商品を見つけるのにも時間がかかり、やっと見つけたと思ったら台車の一番下ということはよくあります。
生鮮食品であればなおさらです。
値引き・廃棄作業はどの売場でも毎日大量に行われ、これに時間も人手もかかります。入荷する商品量が、販売数に見合っているならムダな値引き作業も軽減されます。
発注のしかたひとつで、商品のロスと時間のロスに影響を与えるのです。
定位置管理をする
商品や備品・道具を探す時間の削減になります。
定位置なので、つねに置く場所を決めておくことです。
- 備品や道具は安全で次ぐ手に取りやすい位置
- 重くて大きいものは下へ
- 軽いものは上へ
- 商品も在庫置場を決めておくと探す時にラク
だれが見ても、だれが使おうとしてもすぐわかるように定位置にネームプレートを貼っておくと便利です。使い終わったら元の位置に戻す時に目印にもなります。
次に使う人が探し回らないようにします。探し回ってる時間がもったいないからです。
紛失防止にもなります。
作業動線を直す
特に、BR作業動線の見直しでムダな動きをなくし時間短縮をはかります。
見るべきポイントは、
- 遠回りしてないか
- 逆行してないか
- 手順が増えていないか
- スムーズな流れになってるか
- 障害物はないか
商品入荷から売場へ品出しされるまでの動線がいかに短く効率的な経路になっているかです。
たとえば、
- 品出し頻度の高い飲料類が一番奥になって距離が長くなっている
- 冷蔵庫→加工→トレー盛→パック→値付け→品出しまでムダがない
- 加工作業する際の備品・道具の位置は適切か
今までずっとこれでやってきたからという理由で放置せず、ムダをなくすことは最初は不満もでますが、最終的にはみんながラクになるということを説明すべきです。
なぜ見直すのか、今までのやり方ではいけないのか理由も伝えましょう。
ロードラインを守る
ロードラインとは、スーパーなどにある冷凍のケース内の陳列の高さの上限をいいます。ケース内に青色の線が引いてあります。
今回は法令違反だけでなく、過剰な陳列で冷気の吹出口をふさぐと冷却装置に過度の負担がかかって電力消費が上がり、故障の原因にもなるということです。
営業時間中に気づけばいいですが、夜中閉店中に故障したら商品は全部パーです。
冷凍ケースの修理・交換、そして解けた冷凍食品・アイスの損害額など店負担は高額になります。
過剰積載による故障は、メーカーの保証対象外になる可能性もあるので注意が必要です。
冷蔵ファンの清掃をする
故障防止ですね。
1年に1回は冷凍・冷蔵ケースや庫内の冷却ファンの清掃をした方がいいです。
止まってしまったら商品は持ちません、営業にもさしつかえます。
1年に1回でいいので清掃しましょう。
自動ドアのレール清掃をする
自動ドアの修理代は超高額だからです。
レールの清掃せずに、石などがつまってドアをふさぐとモーターに負担がかかり故障します。
この修理費が高額なんです。
- モーターベルト交換:50000円~
- モーターだけの交換:100000円~
- 駆動部分全交換:200000円~
- 自動ドア全交換:500000円~
せっかくいままでいろんな経費削減のためにやってきたことが、自動ドアの修理で全部飛んでしまうくらいの金額です。
毎日ではなく、売場をまわる時に1日数回、両サイドの自動ドアのレールや動きに異常がないか確認しましょう。
メール・資料の印刷は選んでする
印刷コストですね。
紙とトナー代の節約です。
なんでも来たメールを印刷する人がいますが、見てすぐ捨てるなら印刷する必要はないです。
◆印刷コスト
- 1日20枚で年間7000枚、30枚で10000枚の節約
- モノクロトナー代:1個20000~30000円(5000枚分)
1日30枚の節約で、トナー代2個分も節約になります。
◆年間削減試算
- A4 10000枚:1500円✕4=6000円
- モノクロトナー代:30000円✕2=60000円
合計:66000円の節約
機械的にどんどん印刷する人は、印刷する価値があるかよく確認して、本当に必要な資料だけ印刷するようにしましょう。
カラー印刷は控える
カラー印刷はモノクロの4倍コストがかかるからです。
たとえば、カラー印刷のルールとして
- 社内閲覧用ならモノクロでよくないか
- A3の必要があるのか
- カラー印刷にする基準はどうするか
議題にして、意見を出し合いましょう。
メール・資料・カラー印刷は、あなた1人が節約しても効果がありません。全従業員に理由とルールを理解してもらい運用してはじめて効果があります。
トップダウンで一喝してもうまくいきません。数字が必要です。
数字で営業利益から経費など経緯を説明し、理解してもらいましょう。
新聞購読をやめる
店内の休憩室用に新聞定期購読は本当に必要か?ということです。
これは賛否あると思いますが、以前ある店で勤務していた時、新聞を誰も読んでないことに気づきました。
次の日に、また新しい新聞が届いて、やっぱり誰も読んでないんです。
チラシのためだけなら、アプリでいいじゃん!ってことで新聞やめました。
この2つがあれば小売業のチラシは全国ほぼ見ることができます。
何のために新聞をとるのか、だれが読んでいるのか?
もう一度確認してみて下さい。
まとめ:全員への周知徹底が大前提
今回は、「お店でできる!経費削減のアイデア18選」と題して、お店でできる経費削減対策を実例を交えてお話してきました。
おさらいします。
- 小売業は売上総利益率は高いが、営業利益は3%程度しかない
- 利益に占める経費が大きく人件費と設備費で約9割を占める
- 経費削減といっても、店舗レベルでできることは限られている
- 店舗の経費はいろんな経費から少しずつ節約するしかない
- 店舗のメンテナンスを疎かにすると多額の修繕費がかかる
- 経費削減には、理由と数字で説明し全員の周知徹底が必要
要約するとこんな感じです。
今回に事例以外にもたくさんのアイデアがあるはずです。
1人で悩まず、店舗全員の知恵とアイデアで難題を乗り越えてください。
参考になれば幸いです。
今回は以上です。