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【スーパー勤務25年】相乗積を店舗で活用するのは難しい!

スーパーの仕事

スーパーの社員(主任)

相乗積を使って粗利をコントロールしたいのですが、活用方法がよくわかりません。現場ではみなさんどのように使っているのですか?

こんな疑問にお答えします。

 

 

◆本記事の内容

  • 相乗積の店舗での現状
  • 相乗積のしくみ
  • 相乗積を店舗で活用することの難しさ
  • 相乗積を店舗で活用するなら予算と計画に使え
  • 立場によって相乗積の使い方は変わる

 

◆読んでほしい人

  • 相乗積の計算方法がわからない
  • 相乗積を使って利益を上げようと考えている
  • 相乗積をどのように活用しているか知りたい

 

◆本記事の信頼性

この記事を書いている私は、

  • 東証一部大手スーパー勤務歴25年
  • 管理職歴(副店長・店長)5年

本当に現場で使える解説をしていきます。

 

◆本記事でわかること

本記事を読み終えると「相乗積の計算方法と活用の難しさ」を理解できます。

今回は、相乗積の計算方法と実際の現場でどのように使われているかを解説します。
haru
haru

25年の経験をもとにお話します。

粗利がとれず相乗積を使おうと考えている方はぜひ、

最後まで読んでみてください。

 

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相乗積の店舗での現状

 

大手スーパー、コンビニ、百貨店においてPOSデータの分析がコンピューターで詳細にできるようになった今、相乗積を手計算でする機会は、ほとんどありません。

いまやボタンひとつでどの店が、どの部門が、どのカテゴリーが単品レベルに至るまで売上、点数、利益、ロスがわかってしまうからです。

 

小売業界で働くサラリーマンが、スキルアップあるいは昇進・昇格試験のため理論として勉強しているというのが現実です。

 

相乗積で計算することが目的ではなく、計算して出された結果をどう実行に移し実現させるかがゴールになります。

 

相乗積は店舗で使われない?

 

いきなり結論を言ってしまいますが、「相乗積を使って粗利を稼ぐ」という使い方はしていません。

「予算と計画で使われている」といった方が正しいかもしれません。

 

この話を進めるにあたり、相乗積の仕組みをおさらいしておきたいと思います。

 

相乗積のしくみ

 

任意の選択した各項目の「値入率」または「粗利率」と「売上構成比」を使って、選択した項目全体の値入率(粗利率)をシュミレーションできる手法です。

「値入ミックス」「マージンミックス」とも呼ばれます。

 

任意の項目は、商品でも、カテゴリーでも、部門でも使えます。

今回は、わかりやすく商品を例にします。

 

選んだ項目(商品)の総売上を100とした場合の各構成比と値入率を表にします。

このときの3品全体の値入率が相乗積になります。

 

任意の項目売上構成比値入率
商品A25%25%
商品B40%20%
商品C35%28%
合計100%

 

◆計算式  

構成比 ✕ 値入率
※ 値入率は25%なら0.25へ変換して使用します。
 
商品A     25  ✕ 0.25 = 6.25
商品B   40  ✕ 0.20 = 8
商品C   35  ✕ 0.28 = 9.8

合計24.05     

上記の表、「?」は24.05%ということになります。

 

つまり、相乗積とは

その項目が担った値入(粗利)構成を他の項目とのバランスと全体に及ぼす影響力をシュミレーションすることができるのです。

 

たとえば、

A商品に25%の売上構成と30%の値入率、B商品に35%の構成比と23%の値入率があるとき、全体の粗利目標を25%に設定したら、C商品が20%の値入率なら売上構成比はどれくらいないといけないか?

こんなシュミレーションもできるのです。

 

ここまでが理論としての相乗積になります。

 

ここまでを踏まえ、
ではなぜ、相乗積は現場でほとんど使われないのかを次に解説します。

 

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相乗積を店舗で活用するのは難しい

 

「値入ミックスを使って粗利をコントロールしろ!」

「粗利がとれてないのは、相乗積を使ってないからだ!」

 

こういう上からの発言は、誤解を招きます。

相乗積や値入ミックスが、粗利を稼ぐと勘違いしてしまうからです。

 

相乗積や値入ミックスが粗利を稼ぐわけではありません。

いくら相乗積を駆使して綿密に計算しても粗利は、売れなければ発生しないからです。

そして、チェーンストアにおいて相乗積を使うには、制約が多いということです。

 

制約とはなにか?解説していきます。

 

相乗積が使えない値入率の制約

 

先程の表と計算式で説明した通り、値入率を変えるか売上構成比を変えるかしない限りトータルの値入(利益)率は変化しません。

 

では、値入率を変えるにはどうするか?

 

3つしかありません。

  • 売価を高くする
  • 原価を下げる
  • ロスを減らす

ひとつずつ解説します。

 

売価を高くすることはできない

 

チェーンストアにおいて店舗の担当者が売価を上げることはできません。

システム上できないし、そんな権限もないからです。すべては本部が一括して売価の管理統制をしています。

 

しかし、スーパーにおいては、値下げや処分によって安くすることはできます。

もちろん、目標(予算)である粗利を確保することが前提です。

たとえば、

チラシの商品であっても競合店と売価を合わせるために安くすることはできます。ただし、会社からは安くしてもいいけど、目標の粗利は取れよ!補填はできないし、原価も一緒だからね!

という感じです。

でも、売価を上げることはできないのです。

 

他の商品で安くしている分をこっちの商品を値上げして利益を取るということはできないということです。

売価は本部がガチガチに管理しているので、やったとしても、バイヤーにすぐバレますし、他店より高い売価の店で誰が買いますか?

 

利益を取る前にお客さんが来なくなりますね。

 

原価を下げることはできない

 

これも個別に売価や原価交渉など絶対にしません。

チェーンストアは、数百店舗からコンビニになれば数万店舗にまでなります。

そんなことをしたら、ウチもウチも、と収集がつかなくなります。

 

ロスを減らすことはできる

 

ロスは、発注精度や商品管理、売場管理でゼロにはできませんが、減らすことはできます。

 

売価を上げることはできませんが、

ロス管理として値引き、値下げは店舗に一任されているためスーパーにおいては売価を下げることはできます。

しかし、コンビニについては以前よりも緩和されたとはいえ、店舗での勝手な値下げ、値引きは本部の管理下にあり自由にはできません。

 

相乗積が使えない売上構成比の制約

 

売上構成比を変えるには、

  • 価格(相場)
  • 品揃え
  • 売場面積(尺数)
  • 場所

以上4つが大きく影響します。

 

価格(相場)

 

価格を上げることができないなら、価格の高い商品を取り扱って販売すれば、単価を上げることはできます。

しかし、平均価格が上がってしまうと今まで買ってくれた消費者が買いづらくなり客数が減ってしまう可能性があります。

構成比が上がったとしても、客数がへってしまっては元も子もありません。

 

生鮮食品部門(鮮魚・青果・精肉)は、相場にも左右されます。

気温(冷夏・暖冬)、台風(風・大雨)による不作や不漁です。

精肉は、狂牛病や鳥インフルエンザ、豚コレラなどの風評被害で大きく売上を落としますし、その影響で他部門の売上も変わってきます。

つまり、いくら計画を立てても天候による相場変動は予測できないのです。

 

品揃え・売場(尺数)・場所

 

品揃えをどんどん増やして売上構成比を上げてみてはどうでしょう?

 

品揃えを増やすとなると場所が必要になります。

他のカテゴリーや部門に迷惑をかけずに品揃えを増やすとなると、その売場をどうやって作るかが問題になります。

そもそも売場を広げるだけの余分なスペースがあるのかどうかです。

仮にあったとして、売場をどんどん拡大すれば食品ロスも増え、作業効率も悪くなります。作業時間の延長にも繋がり残業も増え、営業利益を圧迫しかねません。

 

ならば、視認率を上げるために、今より目立つ場所に展開したらどうでしょう?

商品の場所を変えれば、今まであった商品の行き場所も考えなくてはいけなくなります。

そんな大がかりなゾーニング変更を店舗ができるのか?本部が了承するのかですね。

 

商品はどこでも構わず出せばいいわけではありません。

店内のレイアウトは、なにをどこに陳列するか緻密に計算しているからです。

 

このように、値入率や売上構成比を店舗の担当者が変えるには、さまざまな制約があるということがおわかりいただけたと思います。

 

これらの制約が、店舗での値入ミックスを難しくしている原因なのです。

 

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相乗積を店舗で活用するなら予算と計画に使え

 

店舗において相乗積を使うことが難しいなら、あきらめたほうが良いのでしょうか?

そんなことはありません。

店舗において相乗積は活用されていますし、本部も活用しています。

 

現場での相乗積の使われ方

 

とれない粗利を確保するためではなく、予算と販売計画に使われています。

 

たとえば、

  • 本部の商品部バイヤーが 商品別構成と値入率のシュミレーション
  • 本部の予算管理部や営業本部が予算立案のため、部門別構成比と粗利のシュミレーション
  • 店舗責任者の店長が次年度予算を組む時に、部門別売上構成比と粗利のシュミレーション

商品本部や店舗の目標粗利と売上を達成するために各部門の粗利と構成比をいくつに設定するかを相乗積を使ってシュミレーションするわけです。

 

相乗積の理屈がわかっていなければ、対策を打つことはできません。

  • どの部門を強化し、どのカテゴリーの値入を上げれば、利益も上がるのか?
  • どの部門を縮小し、どのカテゴリーの構成比を上げれば、利益が上がるのか?

どこにどんな手を打つと全体の利益がどうなるかをシュミレーションすることが本来の相乗積の役目だと考えています。

相乗積の計算のやり方だけわかっても、意味がないのはそのためです。

 

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立場によって相乗積の使い方は変わる

 

お店に商品が、10アイテムしかないのなら使えるかもですが、スーパーで数万アイテムを相乗積で1品1品管理することなど現実的ではありませんし、不可能です。

使うとなれば、部門単位かカテゴリー単位での活用にならざるを得ません。しかも制約が多いとなれば活用の仕方も環境や立場によって変わってきます。

 

立場による相乗積の使い方

 

社内の立場によって、扱う単位が変わってきます。

  • 本社・予算管理部・・・会社、店舗、部門ごとの売上と利益
  • 商品部バイヤー・・・担当している商品ごとの売上と利益
  • 店舗管理者(店長)・・・店舗内の部門別の売上と利益
  • 部門担当者(チーフ)・・・部門内の商品ごとの売上と利益

予算立案と販売計画作成の段階において、各項目の数字を動かしながら最適化を計るためシュミレーションをくりかえしているのです。

 

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まとめ

 

今回は、「相乗積を店舗で活用するのは難しい!」と題して相乗積の活用の仕方と現状をお話してきました。

 

個人商店の八百屋さん、お肉屋さん、魚屋さん、惣菜屋さんなどオーナーが仕入れから調理、販売まで一括して行っているなら相乗積は大いに活躍してくれます。

しかし、チェーンストアにおいては値入、売価、原価、品ぞろえなど制約が多く、予算・計画・検証に活用することがほとんどです。

限られた環境と条件の中で、相乗積のシュミレーションによって得られたあるべき構成比と粗利に近づけるために、売場をどのように作るか変化させるかがポイントになります。

そして、予算を達成させることがゴールになるのです。

 

相乗積の計算方法はいたってシンプルです。

シュミレーションした結果にコミットするにはどうするか?

そこが一番大切なことです。

 

参考になれば幸いです。

 

今回は以上です。

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